この先、記憶の十字交差あり。
The Map, fusing nostalgia
本作品は、 “記憶”による”地図” というテーマで、映像とサラウンド音響とで構成されたインスタレーション作品である。作者にとっての、過去に訪れた場所や深い記憶として残っている出来事が起こった故郷のあらゆる場所をモチーフとし一枚の絵画を制作する。そして、絵画を描き始めてから完成するまでの間のプロセスをビデオカメラで記録し、一本の映像を制作する。映像を作るにあたりキャンバスに描くための特定の場所を実際に(あるいはインターネット上のgoogle mapで)訪れた際に作者の目を介した動画を視覚的な素材として用い、また、その場所にまつわるエピソード文を読み上げた時の作者の音声や昔弾いたピアノを再び弾いてみた際に発生する音源等を聴覚的な素材として用いている。
作者の視点から一方的にキャプチャされた素材は画面上で1つの絵画として紡がれる。作者は思い返せば出てくる過去の記憶はポジティヴな事・ネガティヴな事問わず形として表出し整理させない限り、曖昧な記憶のまま学習経験としての蓄積で留まってしまうと考え、その事を危惧している。そのため自身の記憶の中にある過去の出来事が起こった場所や思い入れのある空間に焦点を当てて一つの作品を構築する事で、一人間内だけに留まっていた記憶の顕在化が可能と考える。
本作品に登場する場所を知る人のみならずその他の地域から訪れた観者自身の体験と呼応させる事で、作品を通じ、作者と観者間のコミュニケーションがはかられていく事を目的としている。
本作品は"茨城県北芸術祭2016”にて展示されました。